目の疲れに効く市販の漢方薬は?漢方の常識「速効性はない」「副作用がない」は本当?
「漢方薬というと刻んだ生薬を土瓶でぐつぐつ煎じて飲むもの」と思っている人はむしろ少数派かもしれません。
日本の医師の80%以上が漢方薬を使用しており、その多くが顆粒剤などの医療用漢方エキス製剤です。
病院にかかって、これらの漢方薬を処方されたことのある方も多いのではないでしょうか。
薬局やドラッグストアでも見かけます。
眼精疲労や目の不調に効く市販の漢方薬について調べてみました。
目の疲れに効く漢方薬
スマホやパソコン、目が疲れやすい環境では精神的なストレスも大きくなり、疲れ目から眼精疲労、目のかすみ、充血、ドライアイ、涙が止まらない、光がまぶしい、など様々な症状や目のトラブルに見舞われる人が増えています。
ひどい目の疲れがあるが、眼科で診てもらっても異常はないという目の症状。
対処法に困った時に漢方を試してみるものいいかもしれません。
目だけでなく、肝と腎の働きを強化して気のめぐりを正して症状を改善できる場合もあります。
桂枝加竜骨牡蛎湯
(けいしかりゅうこつぼれい) まず目の疲れといったらこの漢方です。
漢方薬はいくつかの生薬をあわせて作られています。
この漢方薬の場合「桂皮」「竜骨」「牡蛎」。
「桂皮」~クスノキ科のケイの樹皮。身体を温め痛みを止めるなどの効能
「竜骨」~大型哺乳類の化石化した骨。不安解消、多汗・寝汗、慢性の下痢に適応
「牡蛎」~イタボガキ科の牡蠣類の貝殻。不眠、めまい、ふらつきなどに適応
効能・効果: 神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経
目は五臓のうち「肝」と関連が深い器官です。肝は気の流れをコントロールして血を貯蔵します。
また加齢ともなう視力低下は「腎虚(じんきょ)」の症状のひとつといわれます。腎虚は漢方医学で言う内分泌系や免疫機能など全般の機能低下のことで、その機能が不足している状態をいいます。
ストレスが原因のときには気のめぐり(肝)を整えることで目の疲れを改善します。
目の疲れで最初に選ぶなら
「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」
を、特に気になる症状については以下の漢方薬を取り入れてみましょう。
視力低下
杞菊地黄丸(こぎくじおうがん) ほてり、口の渇き、尿量減少・頻尿
目の充血
黄連解毒湯(おうれんげどくとう) のぼせ、ほてり、イライラ
目の乾燥
麦門冬湯(ばくもんどうとう) のどの渇き・異物感、のぼせ
なみだ目
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) 動悸・息切れ、立ちくらみ・めまい
疲れ・ストレス
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 慢性疲労・倦怠感
加味逍遥散(かみしょうようさん) 倦怠感、精神不安、のぼせ
腎の働きをよくする
六味丸(ろくみがん) 尿量減少・頻尿・夜尿症、ほてり、口の渇き
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん) 尿量減少・頻尿、むくみ、手足の冷え
八味地黄丸(はちみじおうがん) 口の渇き、尿量減少・頻尿、手足の冷え、手足のほてり
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市販薬で入手しやすい漢方製剤
薬局やドラッグストアで目にすることが多いのは、「ツムラ」と「クラシエ」ではないでしょうか。
ツムラ、クラシエ、コタローの医療用医薬品メーカー3社は、製剤過程に大きな差はなく、厳しく管理された工場で作られ、品質の均一化も徹底されています。
ただ、同じ漢方薬でも、飲み心地、味などが異なるようです。
日本薬局方では、漢方によってどの生薬をどのくらい使うのかを厳密に定めています。同じ漢方エキス製剤でも生薬成分のバランスが各社によって微妙に異なります。
上で紹介した目に効く8種類の漢方製剤は、各社でほとんどが購入可能です。 (一部独自の配合で名称で発売している場合もあります)
ツムラ
- 医療用漢方製剤の8割を占めている
- 品目も多数
- 漢方薬の剤型: 顆粒(荒い粒状)
㈱ツムラ http://www.tsumura.co.jp/kampo/
クラシエ
- ツムラに次いで2番目のシェア
- 製薬、食品、生活用品を扱う
- 漢方薬の剤型: 顆粒(細かい粒状)。錠剤もある
クラシエホールディングス㈱ http://www.kracie.co.jp/products/category/index.html#lMds
コタロー
- 1957年、業界で初めて漢方薬エキス剤を作る
- 簡保薬の剤型: 粉薬(細かい粒状)
小太郎漢方製薬㈱ http://www.kotaro.co.jp/
建林松鶴堂
- 伝統的な製法
- 2019年に創業100年を迎える
㈱建林松鶴堂(たてばやししょうかくどう) http://www.kanpou-tatebayashi.jp/
イスクラ
- 中医学理論に基づいて中成薬のメーカー。日本中医薬研究会の会員店、薬局で販売
- 漢方薬の剤型: 丸剤、顆粒
⦿⦿【第2類医薬品】【イスクラ産業】精華牛車腎気丸 (せいかごしゃじんきがん) 720丸
イスクラ産業㈱ http://www.iskra.co.jp/
漢方薬の常識は本当?
漢方薬というと色々と耳にすることがあります。
例えば、
- 風邪の定番といえば「葛根湯」
- 漢方薬に速効性はない
- 副作用がない
など…
本当のところどうなのでしょうか。
風邪には葛根湯 ⇒ 葛根湯はいろいろな病気に効く
薬局でも手軽に買うことができるようになった漢方製剤で、風邪をひいたら「葛根湯(かっこんとう)」をとる人も多いと思います。
確かに風邪の定番ですが、葛根湯=風邪薬と考えるのはちょっと違うようです。
葛根湯が効くのは、風邪でも初期の症状です。
寒気、発熱、悪寒、頭痛、首や肩がこわばったり、まだ汗も出ていない、そんな症状のときに限られます。
また、同じ症状でも体力が落ちているときには別の漢方があう場合もあります。
葛根湯は風邪だけでなく、肩こりや扁桃腺、中耳炎、乳腺炎、神経痛などの治療にも使われています。
漢方は病気をみて治療するのではなくひとり一人の体質や症状を全体的にとらえています。葛根湯にふくまれる7つの生薬の効果が複雑にからみあって様々な症状に適応します。
その時、その人に最も適した漢方薬を選ぶことがポイントになります。
漢方薬は長く飲まないと効かない ⇒ 素早く効く薬とゆっくり効く薬がある
漢方薬はなんとなくおだやかで身体に優しいと思っている人も多いようです。確かに慢性の病気に使うことが多いようですが、すべての漢方薬が「ゆっくり」「おだやか」なわけではありません。
風邪や腹痛など急性の病気に効くものもあります。
「麻黄湯(まおうとう)」「桂枝湯(けいしとう)」、葛根湯は発汗を促進し自然治癒力を高めてくれます。
花粉症に「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」こむら返りに「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が過ぎ効いたという例も少なくないようです。
体質改善や慢性病の治療に使う場合「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」「八味地黄丸(はちみじおうがん)」などは補うことで治癒に向かう漢方でゆっくりと効くものです。
漢方薬は副作用がなくて身体にやさしい ⇒ 気をつけたい副作用がある
一般的に副作用がないと思われがちです。複数の生薬の組み合わせで最大限に作用を高め、毒性や不都合な作用は最小限に抑える工夫はされています。
ですが、副作用が全くないわけではありません。作用が強い漢方で起こることがあります。
甘草(かんぞう) 血圧上昇、むくみ、だるさ、など
石膏(せっこう) 胃もたれ、食欲不振、吐き気、など
桂皮(けいひ) 発疹、掻痒、など
麻黄(まおう) 血圧上昇、動悸、発汗、食欲不振、吐き気、など
附子(ぶし) 血圧上昇、動悸、発汗、のぼせ、など
大黄(だいおう) 下痢、腹痛、など
副作用を避けるためには、診断をきちんと行ったうえで飲むことです。また漫然と同じ薬を長く服用しないことが大切です。
漢方だから安心、と過信することなく2週間は注意深く自分の身体を観察しましょう。
副作用の症状は様々ですから、少しでもおかしいと思ったら医師や薬剤師に相談することです。
漢方薬は土瓶で煎じる ⇒ 便利なエキス剤もある
人は数千年も前から病気を治すために自然界から薬効のある植物や動物、鉱物を採ってきて生薬を配合して漢方薬として使ってきました。
煎じ薬の良い点はその人に合わせた生薬を組み合わせることです。土瓶で煎じた薬は漢方薬の原点でしょう。
ですが、手間と時間がかかる、外に持ち歩けない、など多くの欠点もあります。
そうして開発されたのが、漢方薬の成分を抽出して作られた顆粒剤や錠剤、カプセル剤などの漢方エキス製剤です。
医療用エキス製剤として148品目があります。一般用の市販薬にもたくさんの商品が発売されて漢方薬を服用することができます。
顆粒のエキス製剤はお湯に溶いて飲むだけです。
まとめ
市販薬で目に効く漢方薬。
- 目の疲れ全般 桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
- 視力低下 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
- 目の充血 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
- 目の乾燥 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
- なみだ目 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
- 疲れ・ストレス 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 腎の働きをよくする 六味丸(ろくみがん)牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)八味地黄丸(はちみじおうがん)
これらは入手しやすい漢方エキス製剤です。
漢方薬も外から身体のなかに取り入れるという点ではふつうの薬と変わらないかもしれません。
どんな薬もよい作用があり身体に合わない作用があることもあるということですね。
私は風邪をひきそう、という時に葛根湯、鼻の調子が悪い時には小青竜湯を飲みますが、症状が治まることが多く重宝しています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
参考 『漢方の基礎講座』/成美堂出版 https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/zcBgs医療用漢方比較 http://www.tsumura.co.jp/ http://www.kracie.co.jp/ http://www.iskra.co.jp/ http://www.kanpou-tatebayashi.jp/ http://www.kotaro.co.jp/index.html