ロービジョンの見え方とは?眼科でできるケアとは
「ロービジョン」ということばを耳にしたことはありますか。
日常生活を送るうえで見にくいことが支障となる人をいいます。「弱視者」といわれたこともあるようですが、視覚障害にかわりはありません。
2000年に日本ロービジョン学会が設立されています。ロービジョンについて調べてみました。
ロービジョンとは
視力障害のひとつで、メガネやコンタクトレンズ、レーシックの外科的な処置をしても視力矯正が十分に行われない状態、つまり、まったく見えないわけではないけれど、日常生活において不自由さを感じている状態を「ロービジョン」といいます。
私たちの目は「視力:ものを見分ける能力」「視野:ものが見える範囲」「色覚:色を見分ける能力」など、主に3つの要素でものをみています。目や視神経、脳の視中枢のどこかが障害されると、この機能が低下してものが見にくくなります。
日本眼科医会によると、国内だけで潜在数は約164万人がロービジョンにあたると推測しています。このうち約145万人がロービジョンといいわれます。
ロービジョンになる要因は、生まれつきのものとその後のものに分かれます
目の病気は治療の遅れなどで回復が難しくなることがあげられます。また適切な治療をしても進行を防ぎきれないこともあるようです。
ロービジョンの場合、残っている視機能を活用することによって、暮らしやすくなります。
ロービジョンの見え方
見え方には個人差があります。
また、Google Chromeの提供する「NoCoffee Vision Simulator」は、アドオンを追加することで簡単にロービジョンの人が見る視覚の状態を疑似体験することができます。
暗くみえる
視界が暗く見える光に対する感受性がうしなわれている状態。視野に膜がはったように見えコントラストが失われる
全体がぼやける
低視力により全体がぼやけ輪郭が判別しにくい状態。大きな文字も読み取りにくくなる
二重にぶれる
見るものがすべて二重にぶれて見える。文字を見るとき見にくい
視野が狭くなる・欠ける
中心が暗転するとまわりの状況が把握しにくくなる。顔は見えてもしぐさがわからない
中心が暗転する
中心が黒く見えてしまう。しぐさはわかっても表情がわからない
ロービジョンの視力
WHO(世界保健機構)の基準では、矯正視力が両眼で0.05以上、0.3未満となっていますが、ロービジョンの定義は、各国においてまだ確立していないのが現状です。また視覚障害者手帳を持つ方のうち、約70%が視覚を活用できるロービジョン者です。(厚労省2006年)
視覚障害者手帳交付基準は、1級から6級までの段階があります。
※両眼視力の和は、万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、矯正視力をいう
1級 | 両眼の視力の和が0.01以下のもの |
2級 | ①両眼の視力の和が、0.02以上0.04以下のもの ②両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの |
3級 | ①両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの ②両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの |
4級 | ①両眼の視力の和0.09以上0.12以下のもの ②両眼の視野がそれぞれ10°以内のもの |
5級 | ①両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの ②両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの |
6級 | 1眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの |
※視野10°はテレフォンカードの使用済みの穴を片目でのぞいて1m先を見たときの景色
6級までに該当しなくても、日常に不自由さを感じている方は多くの方がいます。
基準となる見え方を生活の困難さから3つに分類できます。
1. 0.01程度の視力があれば、食事や衣服の着脱等の50cm位で行える身の回りの動作がなんとか可能である 2. 0.02程度の視力があれば、最低1m位先の物の存在がわかるため、手探りをしない歩行や行動ができ、家庭内の移動や、家族と交流する家庭生活がなんとか可能である 3. 家庭から出ての学校生活あるいは職業に従事する等の社会生活が可能である 1.は1級、2.は2級、3.は3~6級に相当すると述べています。 出典:http://www.ohshimaganka.com/大島眼科病院
眼科で行われること
視機能を正しく評価
視力、視野を初めとする諸検査時に、適切な声かけをしながら、正確なデータを集めます。この時重要なことは、正確な屈折矯正を行う努力をすることです。その結果で得られた視力が、とても大切な基準となるからです。
そして、保有視覚の活用が可能である場合、読み・書きに困難を持つ時と歩行・日常生活に困難を持つ時とに分けて問診を行いましょう。
視覚補助具の選定・処方・訓練
視野が狭いために困難さがある場合は、見たいものを探し、その全体像を把握するために、眼球や顔を動かすことを指導あるいは訓練します。
中心が見にくい場合は、中心以外の位置で見ることを訓練します。また、ニーズに合った視覚的補助具を選定・処方します。
視覚補助具の種類
視覚的補助具は、レンズ系を使用した光学的補助具とその他様々な非光学的補助具とに分けられます。
必要に応じて、使用訓練を行うことも重要です。これらの視覚的補助具の中には、視覚障害者手帳を持っていれば、補装具あるいは日常生活用具として福祉の補助の対象となるものがあります。
光学的補助具
- 弱視レンズ: 弱視眼鏡、単眼鏡、ルーペ、強度の凸レンズ眼鏡
- 遮光眼鏡
- フレネル膜プリズム ほか
非光学的補助具
- 拡大読書器
- 文字拡大パソコン
- 拡大本、拡大コピー
- 罫線枠
- 書見台
- 照明 ほか
ロービジョンケアを行っている眼科
日本ロービジョン学会会員のロービジョンケア対応医療機関リスト以下をご参照ください。
まとめ
ロービジョンとは。
完全に見えないわけではないけれど、視力矯正しても生活に支障がでる見え方の状態をいいます。
眼科でできること
- 視覚補助器具の選定・処方
- 視覚補助器具の使用訓練
- 視覚障害者手帳の申請
- 補装具の申請
- 福祉サービスに関する指導
- ほかの機関への紹介・連携
誰もがロービジョンになる可能性が起こりうるものです。日頃からの目の状態をチェックすることを心がけましょう。
目の病気のチェックはこちらの記事でご紹介しています。
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お読みいただきありがとうございます。
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参考 https://www.jslrr.org/low-vision日本ロービジョン学会 http://www.ohshimaganka.com/feature/大島眼科病院ロービジョンケア